ずっと昔、徳川時代の話です。 合併前の三浜村の浜川新田に源助という男が住んでいました。 源助は信心深い男で、毎月18日には50余キロもある秋葉山(浜松市春野町)に参詣しては「火事のないように」と祈っていました。 ある時、源助が秋葉山に参拝し、更に奥の院に詣でた時のことです。 この堂守に「遅くなってしまったので泊まらせてもらえませんか?」と告げますと、堂守は「今夜は客があるから駄目だ。」といいます。 拝むように頼みこんで、やっとのこと堂守は、「庭の見えないところなら。」と言って泊めてくれました。
しばらくすると青や赤の衣を看た坊さんが大勢、堂の庭に集まって来ました。中の一人が人の気配に気づき、堂守に「今日は誰か客があるのか。」と聞きました。 堂守は「はい、毎月参詣に来る浜川新田の源助が一人います。」と伝えました。 すると、そっと源助の部屋を覗いて見た男は「ああ、この男なら心掛けのいい男だからいい、ここへ連れてこい。」といいました。 源助がおずおずと出て行くと、男は里へ酒を買いに行けといいました。 源助がびっくりしてどうして良いかわからずにいると「よしよし、一人つけてやるから、その者と一緒に行ってこい。その者の後をついていけば良い。」 すると一人赤い衣の男が来て、源助の手を握ったと思うと、源助の体は、ふわりと空に舞い上がっりました。そして一瞬の間に気多川のほとりの富士見屋という酒屋の前に着きました。男たちは天狗だったのです。
酒屋はもう店を閉めて寝ていました。 源助が戸を叩いて「酒を売って下さい。」というと、起きるのが面倒になってか、酒屋の主人は「酒は売り切れて無いヨ。」といいました。 源助を連れて来た男は怒り出して「何をいう、焼き払うぞ。」とすごい剣幕。 結局、他の店で酒を買って、来たときのように一っ飛びで奥の院に帰りました。 翌朝、源助が秋葉山を下りて富士見屋の店の前に来ると、びっくり。富士見屋は昨夜、原因不明の火事になり、焼けてまだくすぶっているのでした。 |