今から350年位前、ずーっと昔の元和の頃の話さ。 浅羽村(現在の袋井市浅羽)の庄屋の家に「小太夫」という子どもがおったそうな。 小太夫は小さい頃から笛の好きな子で、それはそれは上手に横笛を吹いたそうな。 小太夫が15才のときに、山に入っていつものように上手に笛を吹いていると天狗がやって来て、小太夫に「おまえは笛がじょうずだな。おい天狗にならないか。仲間になってその笛の音を聞かせてくれ。」と自分の仲間に入るようすすめたそうな。 驚いた小太夫は、そのまま天狗の背に乗ってどこともなく消え去ったそうな。
浅羽の村では、その夜、小太夫が帰ってこないので村中は大さわぎ。村人が一生懸命探しても小太夫は見つからなかったそうな。 結局、「天狗にさらわれたのだろう。」ということになり、それから夜になると小笠山には、不思議な火がとびかうようになったそうな。
それから何ヶ月かしたある日のこと、庄屋の家では小太夫の母親が心配のあまり病の床についてしまったそうな。 或る夜のこと。雨戸をたたく音がしたので、こんな夜更けに誰だろうと雨戸を開けてみると、栗の実が一つ置いてあり、天狗が飛び去る姿が見えたそうな。 その栗の実を食べると母親は元気になったが、それからというもの、村中に奇妙な事が起り始めたそうな。 子供が急にいなくなって、忘れた頃ふと帰ってくるとか、横笛をもって山に入ると笛が、ひとりでに鳴り出すとか。 村人は「これはきっと小太夫の仕業だろう。」といい、相談して小笠神社の西側に祠を建てて、「多聞天さま」と名付けておまいりをしたそうな。 それからは天狗のいたずらもなくなり、静かな里に返ったそうな。 |