昔むかし、貞永寺(掛川市大坂)にこの地の殿様が訪ねてきました。 住職は殿様を居沼の池に舟を浮かべてもてなしました。その時、舟を漕いでいた東大坂の村男が、たいへんきれいな声で歌をうたいました。 これにたいへん感心した殿様は、村男を城に連れて帰られました。 村男は城でも歌をうたって殿様や家来を喜ばせ、武士に取り立てられることとなりました。 さて、村男はいざ二本の刀を差して登城してみると、武士の言葉も行儀作法も難しく、みんなに笑われるし、刀も邪魔に感じられます。 あくる朝、城ではたいへんな騒ぎが持ち上がりました。 昨晩は殿様のお祝で酒盛りがあった大広間に、なんということか武士の魂である刀が二本置き忘れてあるではありませんか。 いろいろ調べた結果、ゆうべ一段とよい声で歌った新侍の刀。殿様も家来も叱りはしませんでしたが、大いに笑われてしまいました。 男はそのまま侍をやめてしまい、元の百姓に戻ったそうです。 |