まだ農業構造改善もなく、田んぼも畑も区画整理されていないずっと前、国安の畑の中に大きな松がありました。 この松のある周囲は笹の籔でおおわれていました。 ここは人が手をつけるとたたりがあると言いわれており、だれも手をつける人はありませんでした。(こうしたところをこの地方では「ぼっさり」と呼んでいます。)
その言い伝えとは・・・ その昔、徳川軍に敗戦した武田方の高天神城のお姫さまと乳母が命からがら逃げ出して、この大きな松の木かげにやっとの思いで辿りつきました。 一息ついて休んでいたところ、敵方の武士に発見されてしまいました。 ところがこの武士は情深い人で、「早く逃げられよ。向こうに見える河東の山まで行けば隠れるところもあろう、急ぎなされ。」と見のがそうとしたところ、後ろの方で大きな声がしました。 「お主、武田方の姫と知って見逃すことは二心あり、さにあらずば切ってすてよ。」 ふり返って見てがく然としたこの武士は、この男に見られたのでは見逃すこともできず、そうかと言って殺すのはふびん、何か良い方法はないものかと目をつむって考えました。 しかし、考える間もなく「何をぐずぐずしているのか。」と、後で大きな声。 考えもまとまらず、目の前の姫はと見れば、覚悟を決めた姫は草の上にきちんと座って両手を合わせて「南無あみだ仏」を唱えている。 武士は「姫、おゆるしを。」と刀を振り下ろし、お姫さまは事切れました。 それから誰いうとなくこの「ぼっさり」を「えんすけ」と呼ぶようになりました。 ※「えんすけ」とは人の名前だと考えられますが、なぜこの「ぼっさり」が「えんすけ」と呼ばれていたかは、伝わっていません。 |